アシナガバチが窓のすぐそばに巣を作ってから半年近く経った。
秋も深まり、そろそろ彼らの集合住宅?は空になる。
このところ3匹の働き蜂が残って巣を守っている。
まだ幼虫が白い丸屋根の中にいるのだろうか。
最後の蜂が巣立つまでは彼らは巣を離れないようだ。
小さな生き物たちは、
こうして自然の摂理に乗っ取って天寿を全うする。
窓のそばの壁に、
まだ三つほどしか部屋のないこの巣を見つけた時から、
恐る恐る窓を開け閉めしてきたけれど、
彼らは全く私の動きを意に介しなかった。
窓と巣の距離はたったの数センチ、
来る日も来る日も、蜂たちは仕事に精を出していた。
虫の図鑑によると、
こちらが知らずに巣を壊したりした場合だけパニック状態になり、
人を刺してしまうようだ。
私も蜂の巣があるのを知らずに触れてしまい、
子供の時に2度ほど刺されたことがある。
チクッとしてとても痛かったが、ほどなく痛みは収まった。
山を歩いていると、
獰猛だと盛んに言われているスズメバチにもよく出くわすけれど、
私も仲間も一度も襲われたことはない。
なぜなら巣の近くを歩くと、
彼らはブンブンと大きな羽音を立てて警告して来るからだ。
人の周りをやたら恐ろしく飛んで、
さっさと去るように促すのである。
そんな時はそっと先を急がなければならない。
走ったりしてはかえって相手?を刺激する。
人間が何か凶悪な事件を起こしたら、
人はよく、「人間のやることではない」と表現するけれど、
それは間違っている。
人間だからこそやるのである。
人間の凶悪事件はこの国一つとってみても、
毎日毎日夥しいほどあるけれど、
こうした昆虫や動物たちからの悪行?被害は滅多にない。
あったとしても、それは純粋に生存のためだけのものだ。
アシナガバチの巣を毎日観察し続けて、
つくづくそう思ったのだった。