最終日、ツアーから離れて、
私は出店の集まるフナ広場にいた。
ここには昔ながらのヘビ使いや、
怪しげなヘナ施術者、その他大勢様々な人が集まっている。
売れるのかどうか入れ歯をいくつも並べている人もいる。
四時間後の夕食はここの有名なレストランに集まるので、
そこさえ覚えておけば問題ない。
ここには複雑にスーク(市場)が広がっている。
ランプ屋、スリッパ屋、陶器屋、服屋、果物屋‥‥、
ありとあらゆる品があって、どこもここも魅力的だ。
私はスークの奥に入って行った。
地理はよく分からないけれど、
迷ったら英語で聞けばよいと思った。
ここの人はほとんどが英語を話すし、
旅行案内書に書かれた悪者よりも良い人の方が絶対に多い。
そうだ、人はもともと良い人の方が圧倒的に多いのだ。
だから、私はぶらぶらとあちこちの店を見て回った。
「マダム?ジャポン?」とフランス語で呼びかけられたり、
「あなた、可愛い」と、妙な日本語で声をかけられたりする。
気に入った乾物屋を見つけた。
そこには特産のナツメヤシ、胡桃、
アーモンドや無花果などが山と積まれていた。
一キロ入りが基本なのだろうけれど、店主のおじさんは優しかった。
「プリーズ」と懇願すると、
私が差し出した少額のコインの分だけ量りに乗せてくれた。
築地やアメ横ではなかなかやってはもらえないサービスだ。
しゃれたレストランでの食事より、
自分の意思で歩き回り、
自由に選んだこのナッツの買い物こそが、
今回の旅の数少ない貴重な思い出になった。
旅は気ままが良いに決まっている。