趣味の仲間で長年の付き合いのある友人は、
ゴルフが大好きで毎日のように練習をしている。
車に道具を乗せて河原の打ちっ放し練習場に通っているのだ。
そんなに面白いのかと聞くと、
こんな奥の深いスポーツはないとまで言う。
私はわずかな数の人だけのために、
広大な自然を壊して作られたゴルフ場は好きではない。
広い芝地は雑草のはびこりやすい日本の風土向いていない。
だから、ゴルフをする人とはあまり縁がなかった。
友人は私のそんな気持ちを知っていたのに、
先日連絡が合って私に練習場所を見て欲しいと言った。
とにかく一度でも場所を見て欲しいと。
案内された場所は、
車がやっと通れるくらいのダートの道を進んだ先にあった。
大きな木の下に車を止めて、
その場所から河原に向かってクラブを振る。
河原はとても広いけれどボールは遠くまで飛ぶので、
3人しか練習できず、各々が角度を違えてボールを打つ。
私は先に来ていた友人の仲間に紹介され、
蚊取り線香をつけて折り畳み椅子に座った。
広い大きな青い空と緑の草原がどこまでも広がっている。
ここは彼らの機密の場所だとか。
ターブの下でのんびりと読書でもしたくなる。
確かに素晴らしい場所だった。
クラブを振る友人はいろいろと家庭に気苦労が多い。
だから、毎朝ここに来て気分を整えるのだ。
その気持ちがよく分かった。
私もクラブを借りて振ってみた。
「カーン!」と音を立てて、
白いボールが緑の海を飛んで行った。
ボールの行方を目で追っているわずかなその一瞬、
心も軽くなったような気がした。