外苑の銀杏を見に行ったら祭りをやっていて、
銀杏の色づきはまだだったけれど、大勢の客がいた。
ごった返すとまではいかないにしても、それなりの賑わいだ。
入り口付近では大道芸人が何やら芸をしていて、その周りに人々が集まっている。
時折、大きな笑い声が聞こえる。
マイクで「これが最後の芸ですよ」と何度も言っているので、
つい立ち止まって観客の輪に入ってしまった。
30代の大道芸人は人を集める話術が優れていた。
たとえ演技がうまくても、
人々はテレビなどで曲芸など見慣れているから素通りしていく。
でも、彼は違った。
芸も上手な上に話がユーモアに満ちてうまかった。
黙ってみている客を飽きさせないし、その内容が人間味溢れていた。
心の奥にズシンとくる話だった。
いつの間にか観客は彼を応援したくなってくる。
最後の演技しか見なかったけれど、
彼が欲しいと言う「紙」を真っ先に帽子に入れた。
友達と来ていたので二人で一枚の投げ銭。
ひとり500円ってこと。
こんな場合、いつもなら200円止まりの私だけど今回は奮発した。
私が真っ先に歩いて行って帽子に紙幣を入れたせいか、
その後は次々と硬貨よりも千円札が目立った。
いくら稼げたのだろうか、きっとン万円か。
汗まみれの大道芸人はとても嬉しそうだった。
各地の祭り会場を転々と旅しながら回っているというから、
その大変さを思うと、私と友人は顔を見合わせて自分のことのようにホッとした。
そして、「頑張ってね」と彼に声をかけて別れた。