どこかの町の花火の音が響く夜は、必ず二階のベランダに出て花火を探す私。
ベランダから花火が見えないことを知っているのに、もしかしたらと探してしまう。
ドカン、ドカンと爆発音が聞こえてきても、花火の姿はどこにもない。
外に出て開けた場所まで歩いて行くと、
赤や緑の輪になった花火がシルエットの屋根の上にわずかに小さく見える。
どこの町か分からないけれど、確かに花火だ。
それほど花火にはロマンがある。
花火鑑賞は私にとっては夏の終わりを受け入れる証のような気がする。
幾つかの花火を見逃して、夏が過ぎ去ろうとしていた先日の夜、
ついに決心して花火が近くに見えるところまで車で走った。
花火会場の込み具合を知っているのでここで我慢。
そこは数年前に見つけた秘密の場所で、周囲は田んぼで建物はない。
会場からは1キロほどの距離だが、森の上の空に大輪の花火がはじける。
あぜ道に車を止め、椅子を出して香取線香をつけた。
5台ほどの先客が車内で鑑賞している。
祭りの会場と比べるとあまりの静けさだ。
空中に描いたフレームの中の花火は、
視界が広すぎて迫力に欠けるけれど、見ないよりは断然いい。
音もしばらく経ってからドーンとなるので臨場感に欠ける。
それでも尺玉の弾ける様子には歓声を上げたくなる。
フィナーレまで小一時間たっぷり見て、
これで私の夏が完結したような気分にもなって、
来年はぜひとも混雑など気にせずに会場まで行こうと思うのだった。