地方に住んでいると、たいがいが車で旅するので旅先のビールは絶対に不可能。
今年はとっても暑い夏、旅の終わりには電車でビールでも飲みたいではないか。
そこで、わざわざ日光まで電車に乗って小さな旅をしてきた。
鉄道写真が好きな人たちを「撮り鉄」といったり、
日本中乗って旅する人を「乗り鉄」といったり、
確かに電車の魅力は色々と奥深い。
最近はボックス席でお酒を飲むために電車に乗る人を
「飲み鉄」というらしく、何とも面白い略語で感心した。
ささやかだけど、反面、とても贅沢な庶民の旅の感じがする。
駅から世界遺産の町を歩くと、目に入るものがこれまでと違いとても新鮮だった。
電柱の地中化が少しづつ伸び、工事の人が多くいた。
地中化に伴い、歩道もカラフルな敷石に貼り変えられている。
電柱がないと町の様子が現代風で、味のある昭和レトロが消えていく感じもする。
車では東照宮と奥日光観光であっという間だったけれど、
歩くと敷石すら気になってしまうほど濃密だ。
神橋に向かう大通りが「鉢石町」という町名だということも勿論知らなかった。
鉢石町の弘法大師ゆかりの寺に参詣し、高台に上り京の町に似せたという通りを見下ろしたりした。ここは観光客はおらず静謐そのもの。
由緒あるお寺なのに三か国語の観光パンフにも掲載がない。
ところどころに休みどころがあり、鉢石に流れ落ちる日光の湧水が喉を潤す。
お昼には煮物や生の湯葉料理を食べ満腹。
その後、鬼怒川公園まで直通電車に乗って、「鬼怒川公園岩風呂温泉」にゆったりと浸かった。
それから時間はたっぷりあるので「鬼怒子」の足湯と、
一つ先の鬼怒川駅にある「鬼怒太」の足湯まで約2キロをのんびり歩いた。
そして、帰りの普通電車は赤いシートの素敵なボックス席。時間は六時だ。
窓際にコンビニで買った冷たいビールを置いて、夏の緑の森とともに乾杯。
乗換駅からは通勤電車のような車内に変わったけれど、非日常のひとときはこの胸に深く残った。